インタビュー

Vol.13

おしゃべりな龍の酒

東の麓酒造有限会社・株式会社アスク

2014.01.28

使ってあそぼう超漢字検索 Vol.6」では、『大漢和辞典』(諸橋轍次著・大修館書店)に収録されている漢字の中で一番画数が多い「龍龍龍龍」(てつ)をご紹介しましたが、実は「龍龍龍龍」という名前の日本酒があるんです。
なぜこんな珍しい漢字を日本酒の名前につけたのでしょう? 今回は新春特別企画として、「純米大吟醸 龍龍龍龍(てつ)」の命名の由来を探り、東の麓酒造有限会社の高橋さんと株式会社アスクの河合社長にお話を伺いました。

※ 以下、読みやすさを重視し、本文では「龍龍龍龍」と表記します。

「龍龍龍龍(てつ)」はおしゃべりな龍


「純米大吟醸 龍龍龍龍」を造っている東の麓酒造は、明治29年創業で、山形県南陽市に酒蔵を構えています。1月は日本酒作りで一番重要な寒仕込みの真っ最中です。
担当の高橋さんにお話をうかがいました。


純米大吟醸 龍龍龍龍(てつ)1,800ml
写真提供:東の麓酒造

――「龍龍龍龍」という名前のお酒を造っているとうかがったのですが。

高橋:はい。「龍龍龍龍」は「愛山(あいやま)」という酒米を山形吟醸酵母で醸した純米大吟醸です。愛山の特徴である華やかな香りと、柔らかく上品な味わいを楽しめます。食事との相性も良く、食中酒としてもお楽しみいただけます。

――「龍龍龍龍」の名前の由来は?

高橋:「龍」は古くから水神や酒神として奉られてきました。いっぽうで「龍龍龍龍」には“多言”“言葉が多い”という意味があるんです。崇高で勇壮なイメージの龍も寄り集まるとおしゃべりになるなんて、面白いと思いませんか? ラベルには「龍龍龍龍」の右上に「おしゃべり」と書いてあるのですが、この「純米大吟醸 龍龍龍龍」にも、みんなで集まって、おしゃべりしながら楽しく飲んでほしい、という思いがこめられているんです。

――ところで、この「龍龍龍龍」という漢字は、どんなきっかけで知ったのですか?

高橋:「龍龍龍龍」は10年ほど前から販売しているのですが、実は「愛山」を紹介してくれた酒米商社の社長さんが名付け親なんです。「龍龍龍龍」の詳しい由来も教えてくれると思いますよ。

「龍龍龍龍」は幻の酒米とのコラボレーション


ということで、紹介していただいたのは、山形市の蔵王の麓でこだわりのお米を取り扱っている酒米商社、株式会社アスクの河合克行社長です。

――どういうきっかけで「龍龍龍龍」という漢字を知ったのですか?

河合:あるとき興味本位で画数の多い漢字を調べていたんです。最初に「龍×3」という漢字を見つけて、「だったら龍が4つの漢字もあるんじゃないか」と調べていたら、64画の「龍龍龍龍」がありました。その後、テレビ番組でも画数の多い漢字として「龍龍龍龍」が取り上げられていたのを見たことがあります。

――お酒の名前に使おうと思った理由は?

河合:面白いお酒を世に出したいと思ったときに「龍龍龍龍」のイメージがぴったりだったんです。

龍は幻の生き物ですが、「愛山」は“幻の酒米”といわれ、生産量が少ない酒米として知られています。アスクでは、1941年に兵庫県で誕生した「愛山11号」の品種特性を保持しつつ安定して生産できるように、「ASK愛山」として生産管理をしています。

全国の名醸蔵12社で組織された「日本酒道會」から、「ASK愛山でお酒を作りたい」というお話があったときに、会の一員である東の麓酒造さんに「龍龍龍龍」の名前で愛山を使ってもらおうということになり、「純米大吟醸 龍龍龍龍」が誕生しました。

世の中に「龍」の名を持つお酒がたくさんあるのは、それだけ龍もお酒も崇高なものとされてきたからでしょう。そんな龍でも寄り集まっておしゃべりになる世界は、非日常が日常になる世界だと思うんです。

「龍龍龍龍」には「テチ」という読みもあるのですが、日本ではあまりなじみのない音なので、より親しみやすい「テツ」の読みを採用したんですよ。

――ラベルの「龍龍龍龍」の字も、親しみやすい感じがしますね。

河合:ラベルを作るために、いろいろな人に依頼して書いてもらいました。もちろん私も書いてみました。しかし、誰に書かせても字は上手いのですが、面白みがなかったんです。おしゃべりな龍のイメージに合うような遊び心が欲しかったのですが……。

私は花笠踊りのサークル「四方山会(よもやまかい)」の会長もしているのですが、そこに東京在住の小学2年生の女の子が参加していたので、ためしに「龍」を書かせてみたんですね。その子はそのとき初めて習字の筆を手にしたのですが、何枚も何枚も一生懸命書いてくれました。それがとても味があったので、その中から4枚の龍を選んで、画像を組み合わせたのが、ラベルの「龍龍龍龍」なんです。

――最初から「龍龍龍龍」を書いたのではなく、まさに4つの龍が寄り集まってできたラベルだったのですね!

取材を終えて


「女三人寄れば姦しい」という諺がありますが、龍も集まるとにぎやかになるんですね。

「龍」の字を書いてくれた女の子も、今では大学生とのこと。ラベルとともに10年愛されてきたお酒です。皆さんも「純米大吟醸 龍龍龍龍」を見かけたら、おしゃべりしながら楽しく味わってみてください。

ご多忙にも関わらず、快く取材に応じてくださった、高橋さん、河合社長、本当にありがとうございました!

関連リンク


清酒 東の麓 ~山栄遠藤酒造店~(東の麓酒造有限会社)
「龍龍龍龍」のTシャツも販売しています!!

株式会社アスク
「ASK愛山」についてはブログ「あぜ道日誌」に詳しく紹介されています。

民俗文化サークル 四方山会(よもやまかい)
河合社長が会長をつとめる花笠踊りのサークルです。
▲PAGE TOP