Vol.13
東の麓酒造有限会社・株式会社アスク
「純米大吟醸 龍龍龍龍」を造っている東の麓酒造は、明治29年創業で、山形県南陽市に酒蔵を構えています。1月は日本酒作りで一番重要な寒仕込みの真っ最中です。
担当の高橋さんにお話をうかがいました。
純米大吟醸 龍龍龍龍(てつ)1,800ml
写真提供:東の麓酒造
――「龍龍龍龍」という名前のお酒を造っているとうかがったのですが。
高橋:はい。「龍龍龍龍」は「愛山(あいやま)」という酒米を山形吟醸酵母で醸した純米大吟醸です。愛山の特徴である華やかな香りと、柔らかく上品な味わいを楽しめます。食事との相性も良く、食中酒としてもお楽しみいただけます。
――「龍龍龍龍」の名前の由来は?
高橋:「龍」は古くから水神や酒神として奉られてきました。いっぽうで「龍龍龍龍」には“多言”“言葉が多い”という意味があるんです。崇高で勇壮なイメージの龍も寄り集まるとおしゃべりになるなんて、面白いと思いませんか? ラベルには「龍龍龍龍」の右上に「おしゃべり」と書いてあるのですが、この「純米大吟醸 龍龍龍龍」にも、みんなで集まって、おしゃべりしながら楽しく飲んでほしい、という思いがこめられているんです。
――ところで、この「龍龍龍龍」という漢字は、どんなきっかけで知ったのですか?
高橋:「龍龍龍龍」は10年ほど前から販売しているのですが、実は「愛山」を紹介してくれた酒米商社の社長さんが名付け親なんです。「龍龍龍龍」の詳しい由来も教えてくれると思いますよ。
――どういうきっかけで「龍龍龍龍」という漢字を知ったのですか?
河合:あるとき興味本位で画数の多い漢字を調べていたんです。最初に「龍×3」という漢字を見つけて、「だったら龍が4つの漢字もあるんじゃないか」と調べていたら、64画の「龍龍龍龍」がありました。その後、テレビ番組でも画数の多い漢字として「龍龍龍龍」が取り上げられていたのを見たことがあります。
――お酒の名前に使おうと思った理由は?
河合:面白いお酒を世に出したいと思ったときに「龍龍龍龍」のイメージがぴったりだったんです。
龍は幻の生き物ですが、「愛山」は“幻の酒米”といわれ、生産量が少ない酒米として知られています。アスクでは、1941年に兵庫県で誕生した「愛山11号」の品種特性を保持しつつ安定して生産できるように、「ASK愛山」として生産管理をしています。
全国の名醸蔵12社で組織された「日本酒道會」から、「ASK愛山でお酒を作りたい」というお話があったときに、会の一員である東の麓酒造さんに「龍龍龍龍」の名前で愛山を使ってもらおうということになり、「純米大吟醸 龍龍龍龍」が誕生しました。
世の中に「龍」の名を持つお酒がたくさんあるのは、それだけ龍もお酒も崇高なものとされてきたからでしょう。そんな龍でも寄り集まっておしゃべりになる世界は、非日常が日常になる世界だと思うんです。
「龍龍龍龍」には「テチ」という読みもあるのですが、日本ではあまりなじみのない音なので、より親しみやすい「テツ」の読みを採用したんですよ。
――ラベルの「龍龍龍龍」の字も、親しみやすい感じがしますね。
河合:ラベルを作るために、いろいろな人に依頼して書いてもらいました。もちろん私も書いてみました。しかし、誰に書かせても字は上手いのですが、面白みがなかったんです。おしゃべりな龍のイメージに合うような遊び心が欲しかったのですが……。
私は花笠踊りのサークル「四方山会(よもやまかい)」の会長もしているのですが、そこに東京在住の小学2年生の女の子が参加していたので、ためしに「龍」を書かせてみたんですね。その子はそのとき初めて習字の筆を手にしたのですが、何枚も何枚も一生懸命書いてくれました。それがとても味があったので、その中から4枚の龍を選んで、画像を組み合わせたのが、ラベルの「龍龍龍龍」なんです。
――最初から「龍龍龍龍」を書いたのではなく、まさに4つの龍が寄り集まってできたラベルだったのですね!