「超漢字V」に付属の「超漢字メール」は、「超漢字で扱える18万以上もの文字をそのままメールで送れる」「超漢字の実身を添付ファイルとして送れる」といった機能を持つ。本解説では、こうした超漢字メールの特長にくわえ、実身/仮身モデルを基礎とする超漢字の操作体系が本メールソフトどのように生かされているかをみていこう。
超漢字メールは、「メール管理」「メール編集」「メール閲覧」という3つのアプリケーションから成っている。「メール管理」「メール用紙」「メール箱」という原紙が用意されている(図1)。
はじめて超漢字メールを使うときは、まず「メール管理」の原紙を取り出して、メールサーバ、アカウント、パスワード等の情報を設定する(図2)。
メール管理は、メールサーバとの通信を受け持つので、アカウント毎にメール管理を用意する。
メールを送るときは「メール用紙」の原紙を取り出して、メッセージの内容を書く(図3)。
メール用紙を終了すると、直ちに送信するか、後で送信するか、送信しないかを聞いてくるので、ここで送信を指示すればよい。
メールを受信するときは「メール管理」のウィンドウで[受信]スイッチをクリックする。LAN環境の場合は、周期的に自動受信したり、新着チェックしたりすることもできる。受信したメールは[受信箱]という、はじめから用意されたメール箱に保存されている。受信箱をウィンドウに開き、読みたいメールの欄をダブルクリックすれば、メールの本文を閲覧できる(図4)。
以上が超漢字メールの概観である。さっと見たかぎりでは、通常のメールソフトウェアと同じように感じられるかもしれない。しかしながら、超漢字メールには、多言語対応機能や、超漢字の実身添付機能など、超漢字ならではの特長を生かした機能が実装されている。次節から、超漢字メールの特長と独自の機能について解説していこう。
超漢字は18万以上もの多漢字/多文字に対応したOSである。超漢字メールでも、その多漢字/多文字を最大限に生かせるよう、以下のような豊富な文字セットに対応している(図5)。
この豊富な文字セット指定をユーザーが簡単に使いこなせるように、超漢字メールには、他のメールソフトウェアにはあまり見られない、以下の独自の機能を備えている。
メールの本文で使われている文字の種類に従って、文字セットを自動判定する機能である。例えば [自動選択:日本語] を選択すれば、US-ASCII、ISO-8859-1、ISO-2022-JP、ISO-2022-JP-2、ISO-2022-JP-3、UTF-8の順に、表現可能な文字種を拡大しながら、文字セットを特定する。英文のみからなるメッセージを書けば、自動的に文字セットはUS-ASCIIに設定され、日中韓の文字を混在して書けば、文字セットはISO-2022-JP-2が選ばれる、というわけだ(図6)。
文字セットの自動判定機能は便利な反面、メールの内容によっては、無意識のうちにメールを受けとる相手がサポートしていない文字セットが指定されてしまうことも考えられる。こういう場合は、受け取った相手側で肝心のメッセージが読めないという事態にもなりかねない。このようなときは、文字セットに制限を付けた自動判定機能が利用できる。例えば[自動選択:日本語(ISO-2022-JP固定)]を選択すれば、US-ASCII、ISO-8859-1、ISO-2022-JPの順番で、表現可能な文字種を拡大しながら、文字セットを特定する。制限範囲内で文字セットが特定できない場合は、その旨が報告されるので、後述する文字セット外文字の警告機能を使って、問題となる文字を調べる、といった対応がとれる(図7)。
iモード絵文字やトンパ文字は、どの文字セットにも含まれてないため、そのままではメッセージに含めることができない。このため、超漢字メールでは、文字セット外の文字をテキスト形式TRONコード(&T形式)に変換して送信する機能が備わっている。この機能を使えば、超漢字メールどうしであれば、iモード絵文字などの混在したメッセージをそのまま送受信できる (図8)。
また、メールの読み書きはWindowsで行っている、という超漢字ユーザーでも、メッセージをいったん保存しておいて、それを超漢字の共有フォルダ参照小物やファイル変換小物で「&T表記を解釈する」をONにして超漢字の文書実身に変換すれば、本来のメッセージの内容を見ることができるようになっている。いずれにせよ、使われていた文字の情報が欠落することはなく、どういう文字が使われていたのかを特定する情報はメール中に残されていることになる。
文字セットをISO-2022-JPのように明示的に指定した場合、その文字セット外の文字はまったく送ることができない。しかしながら、多漢字/多文字を自然に使える超漢字では、無意識のうちに、文字セット外の文字を本文中で使ってしまうことが考えられる。この場合、文字セット外の文字であることが容易に判別できれば、知らず知らずのうちに文字セット外の文字を使うことがなくなり、便利である。そのため、超漢字メールでは、文字セットを(自動選択ではなく)明示的に指定した場合、その文字セットで表現できない文字をリアルタイムに赤く表示する機能がある(図9)。
メール本文の作成中に文字が赤く表示されたら、別の表現に書き直したり、その文字を文字検索小物にドラッグして、同定字や関連字の中から表現可能な文字セット内の別の文字を探すといった、超漢字ならではの対応もできるのだ。
電子メールの普及がひと段落した現在、ブロードバンド化に代表される通信速度の向上と、デジタルカメラの普及に代表されるマルチメディア化に後押しされ、電子メールの方向性は、その表現力の強化に向きつつある。具体的には、画像や図版を添付ファイルとして送信して、文字だけでは表現できない情報をメールでやりとりしようというものだ。
超漢字メールでは、この添付ファイルの取り扱いも重視している。
超漢字で対応している添付形式を以下にあげる(図10)。
[ ] 内に、設定されるMIMEタイプを記した。
はじめの3つ、TAD文章、TAD図形、TAD書庫は、それぞれ、文章実身(基本文章編集、縦書き文書編集、メール編集のいずれかの付せんがついた実身)、図形実身 (基本図形編集の付せんがついた実身)、書庫実身(書庫管理の付せんがついた実身)を添付するときの添付形式だ。これらの添付形式は、超漢字の実身の内容をそのまま添付ファイルとして送るときに選択される。超漢字メールどうしでメッセージをやりとりするときには、仮身をメール編集につかんでポイすれば、そのまま添付ファイルとして送れるので、たいへん便利だ。
TADアーカイブというのは耳慣れない形式だが、添付された実身/仮身ネットワーク全体をまとめて、圧縮して添付する形式だ。仮身を中に含む実身を添付すると、このTADアーカイブが自動的に選ばれる。実身/仮身の機能をフルに用いて書かれた文書でも、特別な操作なしに添付ファイルとして送信できる上、圧縮までしてしまうので、通信費用や通信時間の節約にもなっている。
テキストやHTMLは、TADで書かれた文書やHTML文書を、通常のテキストファイルやHTMLファイルとして送る設定だ。メッセージを受信する相手が超漢字以外の環境である場合は、このテキストやHTMLを選択することによって、文字情報のみをテキストファイルとして送ることができる。
画像については、任意のレコードの内容を画像ファイルとしてそのまま添付する機能となっている(図11)。
この機能はあくまでも画像フォーマットを特定するためのものであり、TAD表現された画像データを GIF、JPEG、PNG 形式に変換するものではない。ただし、共有フォルダ参照小物やファイル変換小物と組み合わせることにより、TADで表現された画像データを JPEG、PNG 形式に変換して、添付ファイルとして送信することができる。
以上は添付ファイルを送信する際の設定であった。一方、添付ファイル付きのメールを超漢字メールで受信すると、添付ファイルがちょうど仮身のような形で表示される。MIMEタイプを見て、適切な実行機能付せんが選ばれているので、通常の仮身と同じように、ダブルクリックしてウィンドウに開くことができる(図12)。
Windowsのアプリケーションで作成されたデータなどは、もちろん超漢字では見ることができないので、共有フォルダ参照やファイル変換でWindowsの区画に変換してWindows上で見ることになる。
メールソフトウェアは、BTRON以外の世界と情報のやりとりを行うソフトウェアである。現実的にWindows等の他の環境で動作するメールソフトウェアの操作が、どれも似たようなものになっているため、BTRON作法とのかね合いが難しい。そのような状況の中で、超漢字メールはBTRONならではの使い勝手を生かした操作体系を維持している。
一般的なメールソフトウェアは、メールソフトウェア自身の中から新規メール作成の指示を行うところだが、新規メールの作成は「原紙箱」や「原紙集め」からメール用紙を取り出すスタイルになっている。こうして取り出すメール用紙は、キャビネットや基本表計算などの他のウィンドウにも置けるので、特にメール管理のウィンドウを起動しなくても、いつでも新規メールの作成を始めることができるのだ(図13)。
もちろん[受信箱]や[送信済み]のメール箱を開いているときは、[メール]メニューの [新規作成]や左[Ctrl]+[M]で、新規にメール用紙を開くこともできる。使う人のスタイルや、それぞれの状況に合わせて、適切な方法が選べるようになっているのだ。
他の環境のメールソフトウェアなら、ソフトウェアごとに異なるアドレス帳が用意されているというのが一般的だ。しかし、新規にアドレス帳を用意すれば、ユーザーはアドレス帳の操作方法を新規に学習しなければならない。また既存の住所録とメール用のアドレス帳と、データが二重に分散してしまい、使い勝手が悪くなってしまうという問題もある。超漢字メールでは、アドレス帳用の専用アプリケーションを用意するのではなく、基本表計算やマイクロカードをアドレス帳として利用できる設計になっている(図14)。
具体的には、ドラッグされたダブ区切り文書の1番目の項目を名前(ハンドル)、2番目の項目をメールアドレスとみなして、ドラッグ先のフィールドに挿入できるのだ。3番目以降の項目は無視するため、既存の基本表計算やマイクロカードで管理している住所録があれば、その形式をちょっと変更して、先頭に名前(ハンドル)とメールアドレスの項目を追加すれば、そのまま超漢字メールで使えるアドレス帳になるのだ。基本表計算やマイクロカードがアドレス帳になるというのは、データの互換性を重視したBTRONならではのアプローチではないだろうか。
その他、以下のように細かい操作体系においても、BTRON作法が生かされている。
メールで連絡を取り合っていると、
「RE: Re: Re: RE: 会議の件」
「FW: Fw: Fw: 担当者は誰ですか」
というように、返信を表す"RE:"や、転送を表す"Fw:"がたくさん付いたメールを受信することがある。これでは肝心の件名がわかりにくくなったり、ヘッダ部分のサイズが無用に大きくなったりして、あまり気持のよいものではない。
超漢字メールでは、これらの文字列や、本文冒頭の挨拶、本文末尾の署名などを、ユーザーが自由にカスタマイズすることができる(図16)。
先ほどの例では「返信のときは冒頭のRe:やRE:を削ってRe:のみを付ける」というルールや、「転送のときは冒頭のFw:やFW:を削ってFw:のみを付ける」というルールを、ユーザーが自由に設定できるため、
「Re:会議の件」
「Fw:担当者は誰ですか」
というような、簡潔な件名を自動生成することができる。
通常のPOP認証ではPOPパスワードが平文で(暗号化されずに)送られるため、通信路を傍受されると、パスワードが盗まれる恐れがある。このため、プロバイダによっては、APOP認証を使うことにより、パスワードを暗号化して、毎回異なる使い捨てパスワードとし、セキュリティ面を強化している。超漢字メールでは、このAPOP(パスワードの暗号化)に対応している。APOPが利用可能な主要プロバイダのうち、@nifty、So-net、OCNでは、超漢字メールからAPOPによるメールの取得ができることを確認している。
ここで、超漢字メールの多国語対応機能の利用例を示そう。
超漢字メールと Windows上のWindows Live メールとの間では、超漢字メールを使って補助漢字入りのメッセージをやりとりすることができる。
まず、超漢字から補助漢字入りのメッセージを送信するときは、メール用紙の[文字セット]メニューの[設定]で、文字セットに[各国(UTF-8)]を選択して送信する(図17)。
Windows Live メールで受信するときは、通常どおり受信する。Windows Live メールがメールヘッダを見て、エンコードに[Unicode (UTF-8)]を自動選択して、表示してくれる(図18)。
うまく表示されないときは、メニューバーから [表示]-[エンコード] を選択し、[Unicode (UTF-8)] を明示的に選択してみよう。
Windows Live メールから補助漢字入りのメッセージを送る場合は、通常の手順でメッセージを作成し、メニューバーの[書式]-[エンコード]-[その他]-[Unicode (UTF-8)] (状況によっては[書式]-[エンコード]-[Unicode (UTF-8)]) を選択してから、送信すればよい(図19)。
超漢字メールで受信するときは、通常どおり受信すればよい。超漢字メールが文字セットを自動選択して、表示してくれる。
なお、超漢字側でUTF-8/UTF-7で書かれたメッセージを受信すると、包摂された漢字部分は、日本(JIS第1/第2水準と補助漢字)、中国(GBコード)、韓国(KSコード)、の優先順位で変換され、超漢字に含まれない漢字の場合は、未定義文字(灰色の四角)として表示される。
本解説では、超漢字Vに付属するメールソフト「超漢字メール」の内容について説明した。「超漢字メール」は、豊富な文字セットに対応したメールアプリケーションある。「超漢字メール」どうしで、超漢字で利用可能な18万以上の文字からなるメッセージをそのまま送受信できるのはもちろんのこと、日本語や英語以外のメッセージでも、適切な文字セットを指定することにより、文字化けなど心配をせずにメッセージのやりとりが可能になる。また、超漢字の実身に対応した添付ファイル機能を用いることで、超漢字のユーザー間で、電子メールを用いたスムースなデータ交換が可能になる。
「超漢字メール」は、超漢字において、電子メールを用いた情報交換の窓口として、これから多いに活躍が期待されるアプリケーションと言えよう。
「超漢字メール」を使って、18万の文字を使った超コミュニケーションを体験してほしい。
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