超漢字岩波新漢語辞典 詳細解説

外字に頼らない世界初の電子漢和辞典

はじめに

パーソナルメディアでは、最大150万字の文字が利用できる超漢字の特長を活かした辞書コンテンツとして、「超漢字広辞苑」と「超漢字康煕字典」を発売し、好評を博してきました。

今回、新たなラインアップとして「超漢字岩波新漢語辞典」を発売し、超漢字を使った言語活動に、新たな可能性を開きました。

本稿では、超漢字岩波新漢語辞典の全容をご紹介するとともに、超漢字の文字検索小物をはじめ、「超漢字広辞苑」や「超漢字康煕字典」と組みあわせた、超漢字ならではの使い方もあわせてご紹介いたします。

超漢字岩波新漢語辞典のウィンドウ

図1:超漢字岩波新漢語辞典のウィンドウ

岩波新漢語辞典とは

はじめに、岩波書店刊行の「新漢語辞典」そのものについて紹介します。

『岩波新漢語辞典第二版』は、2000年1月に刊行されたいわゆる漢和辞典です。1987年11月刊行の『漢語辞典』を母体とし、その後1994年1月に刊行された『新漢語辞典』に対して、さらなる内容の充実を図ったものです。

岩波新漢語辞典は、漢語辞典刊行以来「漢字を中国語の文字、漢語を中国語の語彙としてでなく、日本語の文字また語彙として位置づけ考えることによって日本文化の本質、また、その発展のあとを理解するという目標」(岩波新漢語辞典第二版「はじめに」より)を目指して編纂されました。特に第二版では、「これまでよりも一層、漢字・漢語の理解を通して日本文化の実体を知る楽しさが加わった内容」(同)になっています。

具体的には、親字として、常用漢字1,945字と人名用漢字285字のほか、国字を含め旧字体・異字体など、計、類書最多の約11,800字を収容しています。また、熟語として、字音語のほかに、漢字表記の定着した和語(特に熟字訓)や外国語の音訳語を含め、約36,000語を収録。「漢字をもって書き表わしたすべての語を収める」(同)という当初の構想に与しています。

親字として約11,800字を有するというのは、超漢字で扱える漢字の数と比較すると、数字の上では少ないと感じるかもしれません。しかし、一般に漢文を読んだり、漢字を用いて日常の言語生活を行ったりするのには、十分な量になっています。中学・高校生の学習用や、社会人の常用に、まさに最適な漢和辞典であるといえます。

超漢字岩波新漢語辞典の特長

本製品は、前項でご紹介した書籍版『岩波新漢語辞典第二版』の内容(図版や一部の付録を除く)を、超漢字上で引けるようにした電子辞書ソフトウェアです。

本製品は、以下の特長を持っています。

  • 岩波新漢語辞典を忠実に再現
  • 多彩な検索機能
  • 文字検索小物との連携

岩波新漢語辞典を忠実に再現

超漢字そのものが、一般のパソコンで利用可能なJIS第1・第2水準の文字に加え、JIS補助漢字やGT書体フォントが利用可能です。本製品では、これらに含まれる豊富な字形を利用して、岩波新漢語辞典の内容をできるだけ正確に再現することに成功しています。

親字見出しにも解説文にも、新漢語で使われているものと同じ字体が使われている

図2:親字見出しにも解説文にも、新漢語で使われているものと同じ字体が使われている

岩波新漢語辞典には、EPWING 規約の CD-ROM 版も存在しWindows や Macintosh 上で利用できます。しかし、これらのOS上で使える漢字数は、親字の文字数(約11,800文字)には及びません。そこで、やむを得ず外字や画像で文字を表示したり、漢字の置き替えをしたりしています。岩波新漢語辞典の内容を、これらのOS上で正確に再現することは、もともと難しいのです。

一方、本製品は、その豊富な文字環境を利用して、岩波新漢語辞典の内容をできるだけ正確に再現しています。これは、辞典の内容を他のウィンドウに貼り付けたり文章実身として保存したりして、岩波新漢語辞典の内容を再利用したりする場合にも有効です。

本文の内容を他のウィンドウに貼り込んでも、新漢語で使われているものと同じ字体が使われる

図3:本文の内容を他のウィンドウに貼り込んでも、新漢語で使われているものと同じ字体が使われる

また、書籍版で使われている字形を画像として収録しており、細い字形の違いまで確認することも可能です。さらに常用漢字については、書籍版の付録に掲載されている筆順の画像を収録しており、該当する親字の見出しの位置で確認することができます。

書籍版の字形と筆順を確認できる

図4:書籍版の字形と筆順を確認できる

多彩な検索機能

コンピュータで辞書を扱う利点のひとつは、検索が短時間で簡単にできるという点でしょう。本製品でも、親字検索、熟語検索、全文検索という3種類の検索方法を提供し、いろいろな角度から岩波新漢語辞典の内容を検索できます。

親字検索は、岩波新漢語辞典が親字として収録している、約11,800文字を対象として検索するものです。親字となる漢字1文字を検索するため、漢字検索のための機能が充実しています。検索の条件としては、音訓、部首、総画数、部首内画数の条件を任意に指定でき、それらの条件をすべて満す親字が検索されます。例えば、読みがわからない漢字の場合は、漢字の部首から探したり、その形から画数で探すことができます。

さんずいを持ち、総画数が13画以上の親字を検索したところ

図5:さんずいを持ち、総画数が13画以上の親字を検索したところ

熟語検索は、岩波新漢語辞典が収録している親字と熟語を対象に、それらの読みや表記を指定して検索するものです。あらかじめ熟語の読みや表記がわかっている場合は、熟語検索ですぐに検索できます。また、検索方法として、前方一致、後方一致、完全一致、部分一致のそれぞれが選択できます。例えば、うろおぼえな熟語の一部だけを指定して部分一致検索で正しい熟語表記を探したり、後方一致でいわゆる「下つき熟語」を探したり、という書籍版の辞書ではできない検索も可能です。

何々的という下付き熟語を検索したところ

図6:何々的という下付き熟語を検索したところ

全文検索は、岩波新漢語辞典が収録している親字、熟語、解説文のすべてを対象にして、その表記で検索するものです。解説文、すなわち熟語の意味内容を検索できるため、特定の意味や解釈を持つ熟語を検索するのに有効です。例えば「静か」という意味の単語を使いたいけれども、文脈からして格調高い漢語を使いたい場合を考えましょう。「静か」という条件で全文検索することにより、「寂静」「寂然」「寂滅」「平穏」といった漢語の同意語を検索できます。また、「寂静」の解説文を開いて、その前後にある「寂寂」「寂然」「寂寞」といった同意語を見つけ出すこともできます。まさに、漢語版日本語シソーラス(同義語)辞書、といった使い方が可能です。

「静か」で全文検索したところ

図7:「静か」で全文検索したところ

文字検索小物との連携

本製品は、超漢字の「文字検索」小物の外部辞書としても利用できます。

親字検索では、音訓、部首、総画数、部首内画数の条件で親字を検索できます。しかし、漢字の読みがわからず、部首や画数もわかりにくい漢字を検索する場合、うまく検索ができないことがあります。この場合、部首のみでなく、漢字を見た目の部品で検索できる「文字検索小物」(超漢字に標準装備されているソフトウェア)を使うのが簡単です。正式な部首を使わなくとも、ちょうど電話で漢字の形を相手に伝えるようにして、漢字の部品を指定して検索すると、読みのわからない複雑な漢字でも簡単に検索できます。あとは、目的の漢字を選択して、文字検索小物で[外部辞書]スイッチをクリックすれば、その漢字を親字とする解説文のページが開きます。

「魚」と「麗」を部品に持つ漢字という条件で検索し、漢語辞典を外部辞書として呼び出したところ

図8:「魚」と「麗」を部品に持つ漢字という条件で検索し、漢語辞典を外部辞書として呼び出したところ

また、逆に、本製品から文字検索小物への連携も可能です。例えば、本製品で[文字検索]スイッチをクリックすれば、ウィンドウ内に出ている親字に関する文字情報が現れます。文字情報では、岩波新漢語辞典に収録されていない、文字コードや、異体字、関連字の情報を知ることができます。ちょうど岩波新漢語辞典と文字検索がお互いに補完しているようすがわかると思います。

康煕字典の「煕」の文字コードを確認しているところ

図9:康煕字典の「煕」の文字コードを確認しているところ

また、すでに発売されている「超漢字康煕字典」が登録されている場合は、文字検索から本製品と「超漢字康煕字典」を串刺し検索することもできます。具体的には、文字検索小物の[外部辞書]メニューで、[超漢字漢語辞典][康煕字典(安永本)][康煕字典(内府本)]のうちから、串刺し検索の対象にしたい外部辞書のインジケータをONにしておきます。その後、文字検索小物で[外部辞書]スイッチをクリックすれば、選択状態の漢字を、複数の外部辞書で串刺し検索します。約300年前に完成し、現在でも漢字字体の典拠とされる康煕字典と、現代日本で定評のある漢和辞典である岩波新漢語辞典が、文字検索を仲立ちとして結合される様子は、豊かに広がる漢字の世界を実感させます。

「漢」で串刺し検索したところ

図10:「漢」で串刺し検索したところ。

その他、本製品では、以下のような便利な使い方が可能です。

  • 検索履歴から過去の検索結果を簡単に呼び出したり、以前に入力した検索条件を再利用したりする機能があります。

    [履歴]メニューの検索履歴

    図11:[履歴]メニューの検索履歴

  • 画面に表示される文字の文字サイズを自由に選択したり、リンクをたどる操作をクリックとダブルクリックの中から選べたりと、イネーブルウェアの観点から操作感を設定できる機能があります。

    標準設定のウィンドウ(上)と、3/2倍の文字設定にしたウィンドウ(下)

    図12:標準設定のウィンドウ(上)と、3/2倍の文字設定にしたウィンドウ(下)

    環境設定パネル

    図13:環境設定パネル

  • 解説文などをドラッグで選択して、そのまま他のウィンドウに貼り込むことができます。これを応用して、本製品で検索した熟語を、超漢字広辞苑の見出し語検索の検索文字列にドラッグして、広辞苑で語義を再確認できます。逆に広辞苑の見出し語の熟語を、本製品の熟語検索で検索することもできます。岩波新漢語辞典では、見出しが熟語に限られること、固有名詞があらかじめ排除されているという特長があります。また、同じ漢字で始まる熟語が一覧されることなどから、あいまいな条件で熟語を探す場合は、熟語検索で探したほうが、目的の熟語をすぐに見つけやすいと思われます。岩波新漢語辞典で熟語がみつかったら、それをさらに超漢字広辞苑にドラッグして、両者の語義を比較すれば、熟語の横のつながりが見えてきて、辞書を引く楽しみも広がります。

    超漢字広辞苑(左)と超漢字岩波新漢語辞典(右)で同じ語を検索したところ

    図14:超漢字広辞苑(左)と超漢字岩波新漢語辞典(右)で同じ語を検索したところ

おわりに

「超漢字岩波新漢語辞典」は、書籍版の『岩波新漢語辞典第二版』の内容を再現する一方で、全文検索や文字検索小物との連携など、コンピュータならではの多彩な検索機能を装備しています。単に書籍版の漢和辞典が電子辞書ソフトになったという以上の優れた使い勝手を実現しています。

この「超漢字岩波新漢語辞典」を使って、漢字や漢語を読む面白さや使う楽しさを味わってみてはいかがでしょうか。

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