インタビュー

Vol.1

手書きのときはどの異体字を使ってもいいんです。

山口明穗

漢字を形づくるもの


昔の遊びで、目を瞑らせて「木偏に公って書いてなんて読むの?」「木偏に毎日の毎って書いてなんて読むの?」って聞いていくのがあるんです。木偏に木の名前になるものを続けて聞いていって、最後に「木偏に黄って書いてなんて読むの?」と聞くんです。「横」の字が思い浮かばない。ただし、目をあけていると、(答えが)すぐわかっちゃうんで、ぜったい目を瞑ってなければいけないんですよ。

――目を瞑っていると、木偏に黄色といわれて、木の名前を探しちゃう? 目を開けていると「横」ってすぐわかる?

ええ。

――目で見るってことで、イメージを感じてるってことなんでしょうか

心理作用なのかわからないんですけど、不思議ですね。ただ、悪いやつがいてうすめあけてたりするとわかっちゃう(笑)

――不思議なものですね。英語の単語でもそういうことがあるんでしょうか。

英語は、音で聞いているから。

――やっぱり音が主体なんですかね。

ただ、名前については、向こうの人でもスペルを聞いてますね。音だけで文字がわかるわけじゃない、アルファベットの綴りがわかるわけじゃない、ってことがあるんですね。

――そういう意味でいうと日本の字、言葉に同音異義語が多いのは、字の形で考えている面があるんでしょうか?

どうなんでしょうかね。だれかが女の一生っていって、女って言う字が生まれてから死ぬまでずっとどういう字を書いていくかっていうのをやっていましたけど、ああいうのもおもしろいですね。ただ、男の一生っていうのはないんですね。

――一生っていうのは?

女偏に生まれるって書いて「姓(かばね)」ですよね。男の場合には「男」をつかっても、あまり字はでてこないですよね。「男」2つの間に「女」をいれて嬲るくらいですか。でも、「女」2つの間に「男」をいれてなぶるっていうのもあるみたいです。

――あ、ほんとですね。両方あるんですね。ほかに、上下に配置されたのもありますね(笑)。

(笑)。で、女偏に右側をいろいろ変えていくと、幼児から老女になっていくまでの一生が表せるというんです。女偏に家で嫁ですが、婿のときには男を使いませんよね。

 女の一生を表す漢字


――なるほど。奥が深いですね。

木偏に目だけはまずいんですね。あれ木偏っていわないんです。「目(もく)」が部首になって、それに木がつくんですね。

――木に目って

首相の相の字です。あれは、木偏っていっちゃいけないんです。

――あの字の部首は木ではないんですか?

目。さっきのクイズで「木偏に目っていってなんだ」ってひっかけると、「お前学がないね」ってことになるんです(笑)。これは、目でずっと近づいてって木を見る、という意味からできたんだっていわれますね。

――これはわからないですね。木偏と思いますよ(笑)。

旁の場所を移動しても同じ字というのもありますね。松なんかですね。

――木偏を上にしてもかまわないんですか?

そうですよ。下にしてもいいんです。

――そういう意味では、わりと漢字には自由度があるんですね。

松とその異体字、島とその異体字

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