Vol.12
株式会社バンダイ
――現在は第7弾ですね。
今:いよいよ12月に新商品が出るんです。
桐:基本は年に2回ずつ新商品を出していて、今年の春に第7弾を発売しています。同じ形とデザインで再販もしているのですが(「超変換!!もじバケる Re:」「超変換!!もじバケる3 Re:」)、次に出すのは、今までに人気のあったモチーフの形を変えて「超変換!!もじバケる特選」という商品になります。
――それは完成品の形が変わるということですか。
12月発売「超変換!!もじバケる特選」より
左から「サメバケる(鮫)」「リュウバケる(竜)」
「オオカミバケる(狼)」
※写真は開発中のものです。
桐:はい。完全に変形方法を変えて、新たにラインナップします。これはサンプルなので最終製品ではないのですけれども……「竜」という漢字です。前回は西洋のドラゴンをイメージして作っていたのですが。
――今回は、恐竜のイメージですね。
桐:あとこれは「鮫」ですね。2010年の第2弾では、ベーシックなかたちの鮫をラインナップしたのですが、今回はハンマーヘッドシャークをイメージしました。
――強そうですね。「交」の部分の使い方など、もとの漢字がよくわかって、かつ、ちゃんと変形されているところがかっこいいです。
桐:できるだけ字の形を崩さないよう、あまりぶつ切りにしないというのは意識して変形させています。
――苦労も多いのではないですか。
桐:第1弾からずっと一緒にやっている設計スタッフがとても優秀な方で助かっています。私はプロデューサー的な立場で商品の方向性は決めますが、実際にそれを実現するのは設計スタッフの役割になります。今回は「狼に遠吠えをさせたい。後ろ足はこうしたい」というようなイメージをこちらから伝えて、設計スタッフに具体的な設計案を出してもらい、最終的にこのような形になりました。
――パーツの間から動物の顔がポコッと出てくるのもかわいいですよね。
桐:変形の仕方もシリーズを追うごとに進化しています。顔を出すという仕組みも、はじめはそんなに多用はしていなかったのですが、だんだんとよりリアルな動物の形になっていっているかなと思います。
――たしかに、一番最初の「犬」からするとかなりリアルですね。
桐:犬は犬で、シンプルさが好きなのですが(笑)。
――「犬」は一番わかりやすいかたちなのかなと思います。「鳥」の羽が開くところとかも。「もじバケる カナ」の「トリ」も羽が開くかたちですね。
桐:鳥の羽の開き方は、新しい鳥モチーフの漢字を使うときに今でも使っています。
――食玩として工夫されるのはどんな点ですか。
桐:お菓子売り場で販売する際に、ある程度手に取りやすい価格にしなくてはならないため、すごく複雑な変形をさせることはできないのですが、いろいろな人に見てもらって買ってもらいたいと思っていますので、たくさん種類を作って発売しています。色違いにしたり、シールのデザインを変えたりして、集める楽しさも演出しています。
――色とシールの柄で、仕上がった動物のイメージが変わりますよね。
桐:実は一個一個にテーマがあって、「これはメカっぽく」とか「リアルな毛のイメージを入れてみよう」とか、こだわりをもって決めています。
――最初のターゲットは小学校の男の子向けということだったのですが、実際の市場の反応としてはいかがでしたか。
桐:学校で漢字を習って漢字に興味が出てくる小学校中学年くらいを想定していたのですが、実はもっと年齢が下の、小学校に入っていない5歳くらいの子も買ってくれています。男女比で言うと、男の子が8割から9割くらいです。
今:親御さんたちも、漢字を学ぶための導入に使えると考えてくれていますね。
桐:お母さんの立場からすると、割と普遍的なモチーフで「勉強にもなりそうだし」と思われるようです。弊社から「知育です」と謳っているわけではないのですが、モチーフ自体がそういう性格を持っているので、購入のハードルは低いのではないかなと思います。
――さまざまな漢字を使われていて、最初のシリーズから常用漢字ではない漢字も採用していますよね。
桐:もともと動物の常用漢字が多くないので、そこはあまり気にせずにやっていました。もちろんみんなの知っているモチーフであるほうがよいとは思うので、人気のある動物を選んでいます。漢字から動物を選んでいるというよりは、動物のモチーフから選び、かつ一文字であらわせるものを採用しています。
――では、特に教育漢字や常用漢字などの枠に縛られることなく、動物をあらわすための漢字を選んでいると。
桐:教材ではなくて、あくまでもおもちゃなので、遊んで楽しいことが一番重要視されるべきかなと思っています。人気のある動物を選んでいるのもそのためです。まずはおもちゃとして楽しんでいただき、かつ「ちょっとためになったな!」と思っていただけたらうれしいですね。
――「ちょっと難しいからもっとやさしい漢字で」という反応はないですか。
桐:「龍」のように複雑で難しい漢字のほうが、知っていると優越感に浸れるみたいで、「知っていてかっこいい」「書けたらかっこいい」ものが、男の子心をくすぐるようです。デザイン的にも、線が多くてゴツゴツしていて強そうなイメージのほうが良いという意見も耳にしています。なので、難しい字に対しての拒否感はなくて、逆にプラスのイメージを持っているのではないかなと思います。「龍」はまさに字も難しくてモチーフも大好き、と二つの要素が合わさって、その弾で一番人気でしたね。
――子供は難しい漢字を嫌がるのかなと思ったのですが、難しい漢字のほうが人気が高いんですね。
桐:そこがおもちゃの良いところだと思います。勉強だと確かに難しい字は覚えにくいし、書き順を間違えちゃうと嫌だと思うのですが、おもちゃなので難しさは気にしていないのではないかと思います。
――おもちゃだと子供のハードルも低くなるんですね。
桐:普段見ている勉強の漢字よりは楽しいものに映っているんじゃないでしょうか。そうあってほしいという期待もこめてですが(笑)。
――「超変換大戦 もじバケるG」のシリーズは合体しますよね。あのアイディアはどこから来たのですか。
桐:もともと第1章では「バケる」同士の合体は公式には謳っていませんでした。ところが、「オレバケるコンテスト」という、自分の好きな「バケる」を組み合わせて作って送ってくださいという企画を行ったところ、すごくたくさんの応募をいただいたんですね。「男の子は変形合体が好きだ」ということが、「もじバケるG」でも証明され、スムーズに「次は2体を合体させよう」という話になり、今発売している第2章(輪廻転生の章)では「超変換武装合体」として公式に合体をうたっています。
――コンテストでは独創的なものが出てきましたか。
桐:第1回でご応募いただいた中で印象に残っているのは、恐竜・怪獣をモチーフにしたと思われる作品で、本当に出来上がりが良かったです。パーツの使い方もすごく上手くて見た目もかっこよく、それが大賞になりました。よくこのパーツをこの部分に使ったな、とアイディアのすばらしさにびっくりしました。
――漢字のパーツの中から接続用のパーツが出てくるのも、バンダイさんならではだと思いました。
桐:「ボールジョイント」と呼んでいる接続用のパーツの先端の丸い部分は、ほぼ共通のサイズにしているので、異なる「もじバケるG」同士のパーツをくっつけることもできます。ちょっとブロック遊びにも似ているでしょうか。もともとそういう遊び方をしていた子供たちもいたようですが、それを実際に商品として公式化したという流れです。