インタビュー

Vol.12

漢字はかっこいい!~超変換!!もじバケる 開発秘話~

株式会社バンダイ

2013.12.03

「超漢字マガジン」1周年記念インタビューは、株式会社バンダイのオリジナル玩具菓子「超変換!!もじバケる」の開発担当者であるキャンディ事業部の桐ヶ谷さんと、広報の今福さんのお二人です。

「超変換!!もじバケる」は、一文字の漢字を組み換えて立体的な動物に“超変換”できる玩具菓子です。漢字の新しい楽しみ方を提供している「もじバケる」シリーズは、2010年5月に発売されて以来、小学生の男の子を中心に、子供から大人まで楽しめる人気商品となっています。

「超変換!!もじバケる」も「超漢字検索」も、名前に「超」が付くだけでなく、漢字をパーツに分解するところも似ている!……ということから実現した特別企画。「超変換!!もじバケる」シリーズの誕生秘話や、漢字で遊ぶ楽しさについてお話を伺いました。

漢字はかっこいい!


――主に食玩を扱うキャンディ事業部で、漢字に着目したきっかけは何だったのでしょうか。

桐ヶ谷(以下桐):一番はじめは、小学生の男の子が漢字を書いていて「かっこいい!」と言ったところから着想しています。もともと私が食玩の事業部におりまして、企画担当として何かオリジナルの商品を考えるべき立場にあったんです。そのときに、男の子の発言を聞いて、漢字って子供から見るとかっこいいものに映っているんだ、ということに気がつき、今一緒に商品を作っているグループ会社・メガハウスの企画・設計スタッフを交えてブレスト(ブレインストーミング)を行った結果、実際に今のような商品になったという流れです。

今福(以下今):小学生の男の子が「かっこいい!」と言ったのは、「龍」という漢字でしたよね。

桐:旧字体の「龍」ですね。書き取りというか……漢字を書きながら「かっこいい」と言っていたので、彼が字だけを見てデザイン的にかっこいいと言ったのか、その字を書きながら龍の姿を思い浮かべてかっこいいと言ったのか、ということを想像しながらブレストを行いました。その結果、漢字が一文字で持っているイメージを、男の子が好きな変形とかけあわせてみたら面白いのではないかということで、企画が固まりました。

――男の子に漢字をよりかっこよく思ってもらえるような企画ですね。

桐:漢字が持っている特性と、男の子が好きな遊びを組み合わせたという考え方ですね。

――遊びとして漢字を分解して再構築するというアイディアは、非常に面白いと思うのですが。

桐:食玩で漢字をモチーフをしたものは今までなかったと思うんです。アルファベットがモチーフのものはあったと思うのですが。実は、当初「もじバケる」は、もっと大きくて、値段も高いものにする想定だったんです。バラバラにして再構築するというよりは、「完全変形」といわれる、付け外しなしで変形できる仕様で考えていました。ただ、小学生の男の子というターゲット層を考えると、自分で手軽に買える価格がよいのではないかということになり、では、それに収めるにはどういう商品仕様にすればよいかということを考えて、最終的に漢字を分解して組み換えるという形に落ち着きました。

――「超変換!!もじバケる」というネーミングはどこから。

桐:最初のブレストの段階からイメージはありました。パソコンや携帯で「字を変換する」という言い方をしますよね。「超」をつけると、「それを一歩超越したもの」という意味を持つと思うのですが、「普通の変換ではない変換」、「文字を変換することをさらに超えるとその形になる」という意味で「超変換」という言葉を枕につけました。「文字化け」も同じくパソコン用語で聞きなじみがある言葉だと思います。ちょっとかわいらしく最後の「る」をひらがなにすることで、商品自体をキャラクター化したいという思いがありました。特性をあらわす「超変換」という単語と、「もじバケる」という、商品自体をキャラクター化した名前を採用して、それがずっとシリーズ名になっています。

――確かに「もじバケる」というひとつのキャラクターという印象を受けたので、ステキなネーミングだなと思います。ロゴにはEnterキーのような矢印も付いていて、パソコン用語っぽいですね。

桐:オリジナル商品なのでロゴも自由に作れました。何パターンも検討し、「超変換!!」の囲みも、キーボードのキーを意識したようなデザインになりました。

――もともと動物に興味があったのでしょうか。

桐:昔から動物は好きでしたので、よく図鑑を見ていました。「もじバケる」のおかげで、上野動物園でイベントを開催することもでき、うれしかったです。イベントでは、動物に関するクイズをしたり、園内でスタンプラリーを行って、スタンプを集めてきた方に「もじバケる」をプレゼントしたりしました。

異色のオリジナル商品


――ターゲット層の小学生が購入しやすくて遊べるようにというコンセプトで完成したということですが、他のキャンディトイシリーズと「もじバケる」が大きく違うことはありますか。

桐:弊社は、スーパー戦隊や仮面ライダー、プリキュアなど、テレビで放映されているキャラクターの権利をお借りして商品化することが多いのですが、「もじバケる」はバンダイのオリジナル商品になります。オリジナル商品は、テレビで番組が放映されているキャラクターと異なり、みんながまったく知らないものを突然発売するという点で、明らかにスタート地点が違うかなと思います。

――最初の売り込みにも苦労されたのではないですか。

今:広報からプレスリリースを発信したところ、商品が特徴的だったこともあり、ありがたいことにメディアにたくさん取り上げていただきました。

桐:第1弾は、社内でも「売れるか売れないかわからないので、発売してからの様子をみよう」という状況でしたので、実はそんなに数を作っていなかったんです。第1弾の段階ではCMも作っていなかったですし、本当にプレスリリースを発信したくらいだったんです。そのリリースに対しての反響が非常に大きく、新聞や雑誌、テレビに取り上げていただいて、急速に広まりました。「小さく生んで大きく育った商品」だと思います。

――シリーズ化になったのは、そういった反響があったからなんですね。

桐:そうですね。第1弾を出してみたら、取り上げていただいた反響と比例するように売れて、スムーズに「じゃあ第2弾を作ろうか」という話になりました。

――御社ではキャラクターものの商品をたくさん出されていて、さらに他社さんも出されているわけですよね。その中で、これだけ長期にわたってシリーズ化されているのは、すごいことではないでしょうか。

今:バンダイ全体では年間に約4000種類の新製品を出しているのですが、食玩だけのオリジナル商品でここまでしっかりシリーズとして定着し、ひとつのオリジナルキャラクターとして認知していただけたという点で、非常に珍しい商品だと思います。

――2011年には、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久収蔵品(MoMA Collection)に認定されていますね。最初にその話をお聞きになったときの印象はいかがでしたか。

桐:突然の話で、あまり実感がなく、「どこで見つけたんだろう」と思いました(笑)。ごく少量をアジアでは販売しているのですが、北米では販売していませんし……。おそらく、企画展を行う際に、MoMAの方が各国から情報を集めて、その中からピックアップされたのではないかと思うのですが。

――MoMAにはどの漢字が収蔵されているんですか。

桐:シリーズの第1弾から第3弾までがコレクション入りしています。

▲PAGE TOP